博多織は、福岡市の博多を中心に生産される織物の総称のことで、着物にはない帯特有の織物。
女性用のカジュアル帯としてはもちろん、男帯や伊達締め、半纏や法被用の帯としても使われています。
ベーシックな献上柄の帯であれば、1年を通して着用でき、また年齢問わず使いやすいので、1枚持っておくととても便利。
今回は、博多織の魅力やコーディネート方法、お手入れの仕方などを徹底解説します。
目次
750年以上の歴史を持つ福岡の名品・博多織
博多織の歴史は古く、起源は鎌倉時代にまで遡ります。
1235年、博多の商人・満田弥三右衛門が宋にわたり、織物の製法を習得。
その後日本に帰国し、家伝の「広東織」として独自の技術を加えながら受け継いでいきました。
その約250年後、弥三右衛門の子孫である彦三郎が再び明に渡航。技法の研究をさらに重ね、帰国後、浮き織りの技術を取り入れた厚地の織物を作り出すことに成功します。
博多で生まれたこの織物は、その地名をとって「覇家台織」(はかたおり)と呼ばれ、現在の博多帯のルーツとなっています。
博多織の特徴と種類
キュッと締めたら緩まない。心地よい絹鳴りも魅力
博多織は経糸の密度が高く、ハリのある堅い生地なので、締めたら緩まず、それでいて解きやすいのが特徴。
締める時にキュッと響く絹鳴りの音も魅力です。
そのため、帯としてはもちろん、伊達締めとしてもよく使われています。
博多織七品目
博多織には、献上・変わり献上、平博多、間道、総浮き、捩り織り、重ね織り、絵緯博多の7つの種類があります。
これらは伝統技法を受け継ぐものとして、博多織七品目と称され、伝統証紙が貼付されている一級品です。
博多織の献上柄について
幕府への献上品となった博多織
もっとも有名な博多織の柄といえば、博多織七品目にも入っている「献上柄」。
1600年に黒田長政によって博多帯が幕府の献上品として指定され、それ以来献上柄と称されるようになったと言われています。
献上柄は、仏具として使用する独鈷と華皿をモチーフとしたデザインが施され、さらに、線の太さにより親と子に見立てた「両子持縞」(孝行縞)と「中子持縞」(親子縞)の4つの柄で構成。
それぞれには厄除けや家内繁盛といった意味が込められています。
色にも意味が込められた五色献上
献上柄には、古式染色による紫、青、赤、黄、紺の五色献上と呼ばれるものがあります。
実は柄だけでなく、色にもそれぞれ意味が込められているのです。紫は徳、青は仁、赤は礼、黄は信、智は紺。
もともとは、世の中のあらゆるものは「木・火・土・金・水」から成るという五行説が由来とされていますが、それにさらに儒教の五常のエッセンスを加え、このような意味合いで象徴されるようになりました。
博多織の特徴
博多織は、手機、力織機で作られる先染めの織物。経糸が非常に密で、緯糸が太いのが特徴です。
何千という細い経糸に、太い緯糸をしっかりと打ち込んで織られるため、他の帯では緯糸で文様を織るのが一般的ですが、博多織の場合は経糸で文様を作り出します。
コーディネートのポイント
博多帯は、伝統的な洒落帯。そのため、冠婚葬祭といった礼装には不向きです。
小紋や紬といった普段着用の着物に合わせます。
また、透け感があって軽やかな雰囲気の紗で織られた紗献上というものもあり、こちらは夏着物や浴衣におすすめです。
博多帯のお手入れ方法
博多帯に限らず、正絹の着物や帯は湿気が大敵。
変色やカビの原因になってしまいます。
そのため、着用後は数時間の陰干しが必須。
締めない場合でも、春と秋の年2回、湿気の少ない天気の日に陰干しをするのがおすすめです。
収納も、湿気が多いところや風通しの悪い場所はNG。万が一シミや黄変ができたり、汚れがついてしまったりした場合は、呉服店や悉皆屋などの専門店に相談するようにしましょう。