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ぜんまい紬の特徴や歴史について

ぜんまい紬とは、山菜のぜんまいについている綿を真綿糸と混ぜて紡いだ糸を緯糸に用いて織られた紬で、横節が素朴で味わいのある紬です。

着物通のファンが多く、現在では希少性が高い高級品として知られていますが、もともとは農家の普段着として織られた、質素な紬が原点です。

ぜんまい紬とは?

 山菜として食用に用いるぜんまいの綿を紡いで織ったぜんまい紬は、山形の米沢などで織られています。

ぜんまいの綿毛には、カビよけや虫よけ効果があると言われ、昔からクズの真綿と混ぜて糸を紡ぎ、織物に用いられてきました。

ぜんまいの綿は、保湿性や防水性にすぐれており、織り上げると丈夫な反物となります。色があせると裏に返して仕立て直し、親、子、孫の世代まで着ることができると言われています。

 

ぜんまいは、山菜として乾燥させたものが販売されていますが、その時に処理する不要なものなので、綿自体はそれほど高価ではなく、国産のぜんまいの綿が使用されています。

山菜として採集され、その日のうちにていねいにワタを取り除いて食用として乾燥させますが、綿はゴミを取り除いて、くしでとかして毛並みを整えて出荷するようです。

 

ぜんまい綿を紡いだ糸は、真綿を紡いだ糸とほとんど変わらない感触ですが、ふんわりとした温もり感があるため、秋から冬に着る合わせの着物として用いるのが適しています。

単衣に仕立てた場合は、若干裾さばきが悪いとの意見もあるようです。

天鷺ぜんまい紬について

秋田県の天鷺(あまさぎ)ぜんまい紬は、「ぜんまい白鳥織」とも呼ばれ、真綿にぜんまい綿と鳥の羽毛を混ぜ込んで紡ぎます。

その糸を緯糸として織り込んだ紬で、羽毛が入っているため、ぬくもりがあり、フンワリとした質感が特徴です。

ぜんまい紬の歴史

 ぜんまい紬は、山形県で生産されている米沢紬から発祥したもので、紅花、苅安、クチナシなどで染めた絹糸で織り上げますが、ぜんまい紬は緯糸にぜんまいの綿を織り込んでいます。

もともとクズ繭と、そのクズ繭さえ手に入らない農家の人たちの手によって編み出されたものです。

5月に山菜として収穫したぜんまいから綿を取り、ていねいにごみや汚れを取り除いて、夜なべに紡いだ糸を使って織った普段着です。

歴史とて定かでないほどで、貧しさからの工夫の象徴ともいえる織物のひとつです。

雪に埋もれる地方では、冬の仕事の一つとして家族の普段着を作ったようですが、ぜんまい紬のほかにも、使い古しの和紙や木の皮をうすくはいで織り込んだ布なども作られていたようです。

・紙糸紬について

紙を細かく切って織り込んだ紙糸紬は通気性がよく、単衣の着物として今も用いられています。

・シナ布紬について

シナの木の皮をはいだ内側の薄い皮をそいで、糸状にしたもので織り上げます。

主に帯に用いられます。

 

ぜんまい紬、紙糸紬、シナ布紬とも発祥地は山形ですが、今では非常に希少性が高い織物です。

ぜんまい紬の特徴

 経糸に真綿を、緯糸に真綿とぜんまい綿を混ぜ込んだ糸を使って織られたぜんまい紬は、織り上がった後、フシのようなものが出ますが、これがぜんまいの繊維で、ぜんまい紬特有の味わいです。

羊毛にも似た風合いで、薄茶色の独特の天然の色合いを持っています。

 

もともと農家の人々のアイデアから生まれた庶民の普段着です。

クズ繭を紡いで経糸とし、5月に収穫した山菜のぜんまいの綿をていねいに掃除して緯糸にして、手で紡ぎ、身の回りにある植物で糸を染め、織って常着として用いられてきました。

 

ぜんまい紬は着物にも帯にも用いられますが、先人たちが工夫して作り上げた常着なので、いくら希少で高価なものでも、公式な場には向きません。

やはり趣味の着物として遊び着感覚で着たい紬のひとつといえます。

米沢紬について

ぜんまい紬は米沢紬として分類し販売されることも多く、米沢紬の特徴や歴史を知ることが、ぜんまい紬を知ることにつながります。

米沢紬は江戸時代にはじまり、明治時代に絣模様が確立しましたが、琉球絣に似ていることから「米沢琉球紬」とも言われています。

米沢紬は緯糸だけに絣糸を使いますが、この技法を横絣といいます。

ぜんまい紬は、緯糸だけにぜんまい綿を使います。

 

米沢紬はぜんまい紬と同じように草木染が主体で、用いられる植物は紅花、ヤマモモ、くちなし、苅安、栗などです。

置賜紬について

 山形県南部で織られる紬を総称して置賜紬といいます。

米沢市の草木染を主体とした米沢紬、白鷹町の白鷹板締小絣や米琉板締小絣、長井市の緯総絣、併用絣の全体が置賜紬です。

まとめ

数ある紬の中でもぜんまい紬は、着物通の人が選ぶ趣味性の高いものです。

独特の雰囲気があり、着物道楽の人のための着物とも言えますが、着る場所を選ぶため、少ない着物を上手に活用したい方は、袷に仕立ててお食事会や観劇などに着ていくとよいでしょう。

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