久米島紬は沖縄県久米島に伝わる伝統的な紬で、伝統工芸品として通産産業大臣の指定、沖縄県の無形文化財の指定を経て、2014年に国の重要無形文化財として指定されています。
日本には各地に伝統の紬がありますが、その中で久米島紬とはどのようなものなのでしょうか。
久米島紬の歴史
沖縄では14世紀後半から中国をはじめとした東南アジアとの貿易が盛んに行われていました。
そんな中、15世紀後半に「堂の比屋」と呼ばれる人物が中国に留学し養蚕産業を学びこれを広めたことが始まりと言われます。
なお、「堂」とは昔の村の名前で「比屋」とは男主人のことです。したがって、「堂の比屋」とは一人の人物を指すのではなく、代々存在していたと考えられます。
日本の紬の技術は久米島を起点として発達し、沖縄本土、奄美大島を経て本土に伝えられたと言われています。
したがって久米島紬は日本三大紬とも言われる大島紬、久留米紬、結城紬等のもととなり日本全国に伝播されていき、久米島紬が紬の発祥地とも言われます。
久米島紬の特徴
製造方法
久米島紬は琉球王朝時代以来の伝統を保ち、製法は手作業によっています。また模様の選定から染付け、織り、仕上げのきぬた打ちまでの工程を一人で行います。
まず図案を描き、色を決めると自ら山に入り染料の原料となる植物を採取するのです。
染料
久米島紬は島に自生する植物染料のみを用いて行われ、天然の草木、泥染めによって染色します。基本色は黒褐色、赤茶色、灰色、黄色、鶯色等があります。また、染色を何度も繰り返す煮染法より、浸漬染法が多いことも特色の一つです。
泥染め
山に自生しているグールの根を細かく割ってチップ状にし、2~3時間ほど煎じた液で染めます。1日に染色を4~5回、これを10日程行います。
ユウナ染め
ユウナの幹を15~20㎝に輪切りし、焼いて木炭化させます。その木炭をさらに石臼で粉末化した後水に溶かして豆汁を入れ、目の細かい布でろ過した液で染めます。1日に染色を5回、これを8日程行います。
ヤマモモ・グルボー染め
黄色の染色をヤマモモの幹の皮とグルボーの幹の皮を2:1の割合で同時に煎じた染液で染めます。
きぬた打ち
久米島紬は染色の回数が多く行われます。したがって、染色の段階で起きた糸の膨らみや、毛羽をおさえるためにつけた糊が影響して反物は地風が固く織りあがってしまいます。
そこで糊を落とし、風合いと折り目を整えるためにきぬた打ちを行うことで光沢のある美しい仕上がりになります。
きぬた打ちとは、硬い木の台や石の台でできたきぬた打ち台を綿布で包み、その上に固定された反物を4.5㎏の杵を使って二人がかりで力いっぱいたたきます。
これを反物をたたみ直し、内側と外側の位置を3~4回変え、20分~30分にわたり、回数にして約400~500回行います。
きぬた打ちは適度な反物の湿り気と杵でたたく度合いで紬の光沢と風合いが左右される重要な仕事です。
また布面に折り目ができないような工夫と、杵の角で布を切らないように角度を並行に保つなどの工夫が必要です。
品質管理
久米島紬は1916年に久米島紬織物協同組合が設立されると品質管理や原料、紬製造、染色・洗濯の改良、染料の保護、紬製品の検査が協会主導で行われるようになります。
また品評会、博覧会への出品も行われました。
これによって品質が向上し、生産量が伸びるようになりました。
また、協会の品質管理には基準があり、紬は検査に合格したもので1反5~6円、不合格品で2~3円で取引されていました。
久米島紬の販売相場
久米島紬は全国の呉服店で広く取り扱いがされています。現在では着尺で25万円~50万円前後で取引されています。