加賀友禅の歴史とその特徴は?

自然の美しさをいかした染め技術。優しい風合いが魅力の加賀友禅!

京友禅や東京友禅と並び、日本三大友禅とも称されています。

石川県金沢市で作られている染め織物の一つです。

京友禅と同じく宮崎友禅が確立した染め技法にもかかわらず、京友禅とは対をなすような優美かつ柔和な美しさを持っています。

加賀友禅の歴史

加賀はもともと染めが盛んな街。

加賀独自の無地染めの技法「梅染」に始まり、なんと500年もの歴史を誇ります。

桃山末期から江戸時代にかけては、すでに約200件もの紺屋が軒を連ね、さまざまな染色が行われていたそうです。

そんな染めの街で加賀友禅が確立したのは、江戸時代の元禄期のころ。

京都で京友禅を生み出した宮崎友禅が、晩年金沢に身を寄せ、元々その地にあった模様染めの技法に、新たに自身の図案を加えていったことがきっかけとされています。

友禅染の特徴でもある糸目糊の技術を定着させるなどして、加賀友禅の発展に大きく寄与しました。

加賀友禅の特徴

次に、加賀友禅の特徴について記してみました。

柔らかな色味が特徴の加賀五彩

加賀友禅は、自然や古典柄をモチーフとした、絵画調の美しく優美な絵柄が特徴です。

基本的に多彩な色を使用しますが、ベースとなる色は藍、臙脂、黄土、草、古代紫の5色。加賀五彩と呼ばれるこれらの色を基調とし、伝統的な色味を使った落ち着いた風合いに仕上げられています。

京友禅とは対をなす技法

加賀友禅ならではの技法としてよく知られているのが、「先ぼかし」と「虫食い」。

「先ぼかし」とは、模様の外側を濃く、内側に向かってだんだん淡くグラデーションを描いていく技法のことです。

京友禅では、外側に向かって淡くぼかしていく傾向があるので、同じ友禅ながら正反対の特徴を持っています。

そして、「虫食い」は、葉などの模様に黒の点を描く技法のこと。

木の葉が虫に食われた様子を表現しており、リアリティがありながらも、絵柄全体に絶妙なアクセントを与えます。

ちなみに京友禅では定番の絞りや刺繍、金銀箔などの加飾は、加賀友禅で施されることはあまりありません。

加賀友禅の制作工程

加賀友禅は多くの工程を一人で進めていくのが特徴。そのため、比較的作家性が出やすい染め技法といえます。加賀友禅には主に手描き友禅と板場友禅の二種類に分けられます。

手描き友禅

手描き友禅はその名の通り、手描きで絵付けをしていく方法です。

まず図案を考えたら、青花という露草の花の汁で白生地に下絵を描いていきます。

その後、下絵に沿って糸目糊を引いていきます。

これは、彩色の際に染料が滲み出ないよう、防染の役割を果たすものです。

その後、絵柄に手で彩色を施し、最後に刷毛で着物の地色を染める地染めを行います。

板場友禅

一方の板場友禅は、型紙を使って染めていく型染めのこと。

型友禅や加賀小紋染めとも呼ばれています。捺染板と呼ばれる長い一枚板の上に生地を張って、その上に図柄を彫った型紙を置いて染めていく技法です。

非常に緻密な模様が染め出され、手描き友禅とはまた違った風合いを楽しむことができます。

加賀友禅の着用シーン

奥ゆかしい美しさと品格のある加賀友禅は、主に礼装用の着物として仕立てられるのが一般的。

留袖や振袖などの正装のほか、訪問着などの準礼装によく見られます。

豪華な刺繍や金銀箔はほとんど見られないものの、なじみやすく、飽きのこない柔らかな色合いで親しまれています。