越後上布の歴史と特徴について

新潟県南魚沼市に伝わる平織の麻織物・越後上布。

宮古島の宮古上布と並び、「東の越後、西の宮古」とも称される最高級織物です。

暑い夏でにも涼し気に着こなせるということで、夏の着物や帯の代表的な素材の一つとして親しまれています。

越後上布の歴史

越後は、古くから麻織物が盛んな地域。731(天平3)年には、すでに越後で織られた麻織物が朝廷に献上されており、正倉院にも納められています。

その後、江戸時代には幕府御用となり、なんと年間20万~30万反も生産されていたそうです。

しかしながら需要の低下や職人不足などにより、現在では80反程度の生産に留まっています。

特に、明治時代以降は工業化が進んだため、昔ながらの形態で生産されている織物はごくわずか。非常に稀少価値の高いものとなっています。

越後上布の由縁ですが、もともと江戸時代から明治時代の頃には「越後縮(えちごちぢみ)」と呼ばれていました。

その後、行政単位の細分化などの影響により、小千谷地域で生産されるものを「小千谷縮」、南魚沼地域で生産されるものを「越後上布」と区別されるようになったことが、越後上布という呼び名の始まりとなります。

このように、同一の起源を持つ小千谷縮と越後上布は、基本的な製法が同じこともあり、昭和30年にはともに国の重要無形文化財に指定されました。

越後上布ができるまで

制作工程

越後上布の原料は、青苧(あおそ)。

これは、苧麻(ちょま)と呼ばれる植物の皮をそぎ落として、中の繊維を乾燥させたものです。

この青苧を爪で裂き、乾かないように口に含んで湿らせながら糸を繋いでいきます。

これは非常に根気のいる作業で、一反分の糸を績むのになんと3か月以上もかかるそうです。

こうして績んだ糸を、くびり糸で固く巻いて染色して絣模様を作り、その後ようやく地機で手織りされます。

織り上がったら、生地を水に浸し、その上から足で踏みつけます。

これは、「足踏み」と呼ばれる工程で、汚れを落としたり、生地を柔らかくしたりする役割があります。

そして、最後に行うのが、越後上布独特の技法でもある「雪晒し」。

天気の良い日に雪の上に生地を広げて晒すという方法で、この光景は越後の春の風物詩ともなっています。

この雪晒しには天然の漂白作用があり、色目を落ち着かせ、白い生地であればより白く美しい生地に仕上げてくれるという効果があります。

重要文化財の条件

染色は、手括りや手摺り込みという技法によって進められます。

越後上布は、国の重要無形文化財に指定されていますが、全てがこれに該当するというわけではありません。

重要文化財として認められるのは、下記5つの伝統的な製法で作られたものに限られます。

  • すべて苧麻を手績みした糸を使用すること
  • 絣模様をつける場合は、手くびりによること
  • いざり機で織られていること
  • シボとりをする場合は、湯もみ・足踏みによること
  • 晒しは雪晒しによること

越後上布の特徴

夏の着物地や帯地として使われる越後上布。

吸水性や撥水性、そして通気性に富んでいるため、日本の蒸し暑い夏でも軽やかに着こなすことができます。

薄手でふわっと柔らかな手触りが心地よく、その上程よくシャリ感もあるので着付けのしやすさも抜群。

自然布ならではの素朴な風合いを残しつつも、気品のある着姿を演出します。

柄は、絣や縞が主流。シンプルなデザインが多いので、コーディネートも思いのままです。