郡上紬の特徴や歴史について

東海地方の岐阜県郡上八万で織られる紬を、郡上紬といいます。

岐阜県を代表する地域ブランドといえますが、歴史は新しく、第二次世界大戦後に織られ始めました。

紬通の着物物愛好家には、着れば着るほど着心地がよいと評判です。

郡上紬とは?

 草木染で縞柄に織られた郡上紬は、庶民の普段着の着物として用いられてきました。

農家では古くから自家用の着物として、クズ繭を紡いで手織り機で織られていました。

郡上八幡地方はもともと養蚕が盛んで、戦後工芸家の宗廣力三(むねひろりきぞう)の尽力もあり、地域ブランドとして知られるようになりました。

 

宗廣氏はインド北部からベトナム、中国南部が原産地の野生の蚕や羊を飼い、自ら様々な織や染を試み新しい技法を 編み出しました。

宗廣氏は、1982年に紬の世界では初めて個人で重要無形文化財に認定されています。

氏亡き後は、長男はじめ弟子たちに受け継がれています。

郡上紬の歴史について

郡上紬が地場産業として発展していったのは第二次世界大戦後といったことしか分かっていません。

それ以前は、各農家で家庭用の衣料として織られていました。

昭和に入り一時衰退した郡上紬が再び人気を得るようになったのは、郡上八幡出身の宗廣力三氏(1914年~1989年)の功績が大きいと言えます。

郡上紬の特徴

・糸について

春に孵化した蚕は夏や秋に孵化した蚕より、まゆが良質と言われていますが、郡上紬の糸は、国産の厳選春まゆのみを使って織りあげています。

 

・織について

郡上紬の着物や帯は微妙なぼかし織が特徴で、絣模様や格子模様のグラデーションが、粋で現代的です。

 

・染めについて

郡上紬の草木染とは、草木を材料として繊維に色をつけますが、人造染料と区別するため天然染料を草木染と言ったようです。

草木染にはヤマモモ、ヤシャブシ、アカネ、カリヤス、アイなどが用いられており、美しい色合いを出すために、何回もくり返して染めています。

「茜100回、藍100回」と言われ、しっかりした染が着るほどに風合いを増します。

郡上紬は、手紡ぎと草木染が特徴で、親子三代着てもあせることがないと言われています。

 

・製作工程

繭をほぐしてよりをかけて糸を紡ぎます。

紡いだ糸を灰汁などで洗い不純物を取り除きます。

その後植物染料で染めます。

次は織り機に糸をかけます。

経糸には節糸の玉繭が緯糸には春繭からとった本真綿が用いられます。

郡上紬の魅力とは

 草木染による素朴で優しい色合いと光沢が、郡上紬の魅力といえます。

染料液に糸を垂直に入れて、糸の繊維に染料を吸い上げさせて染める「どぼんこ染」の技法が宗廣氏によって確立されました。

その技法を応用して様々なぼかし染めの糸を作り、その糸を用いて縞や格子の幾何学模様を織り上げて、反物としています。

郡上紬は着れば着るほど、洗えば洗うほどツヤと深みが増すと言われています。

 

・郡上紬の身近なグッズ

魅力的な郡上紬を身近に楽しむにはネクタイや、小銭入れ、名刺入れ、テーブルセンターなども製品化されているので、アクセントとして用いるのもよいでしょう。

 

郡上紬のコーディネートについて

郡上紬は、ぼかし染めの技法や絣の技法が多く用いられています。

ぼかしによるグラデーションや多色使いの格子模様などの技法が、着物として仕立て上げた時に、思った以上に紬としては華やかです。

そのため、帯や小物はなるだけあっさりと下大人感覚のものを選ぶようにしましょう。

・着物と帯について

紬の着物には名古屋帯を用いますが、郡上紬などの織の着物には、金糸や銀糸を使った帯は不向きです。

以前は紬など織の着物には、染めの塩瀬地の帯などが適していると言われてきましたが、最近は雑誌などでも、博多帯や紬帯なども着物との相性がよければコーディネートされているので、こだわる必要はないようです。

・名古屋帯の主な染め帯について

郡上紬に合う染の帯は、塩瀬羽二重、ろうけつ染め、友禅染、紅型染めといった組み合わせがポピュラーといえます。

 

基本的に濃い色の着物なら薄い色の帯を、薄い色の着物なら濃い色の帯を締めると、バランスがとれますが、着物と帯を同系色でまとめると品よくまとまります。

織の着物にも博多帯や西陣織を用いても問題ありません。

気取らないふだん着なら、半幅帯でも大丈夫です。

 

帯揚げや帯締めは礼装用のものでなければ、自分の趣味に合ったものを用いると良いでしょう。

紬に帯揚げと帯締めを合わせるとフォーマルっぽくなってしまうので、違った色を選び、抜け感を出すとおしゃれな装いになります。

どんなに高価な紬でもおしゃれ着なので、あえて外すことで個性的になります。

まとめ

郡上紬は、着れば着るほどに味わいが深まり、体にそうといわれます。

郡上紬は昔から自家用紬として織られていましたが、明治以降は衰退していました。

本格的に復興されたのは、第二次世界大戦後です。

現代では着心地や丈夫さに加え、格子模様や絣模様のモダンさが好まれて多くのファンの支持を受けています。